光華学園大学史学科講師・滝連太郎は妻子がいながら、淡路慶子と愛し合っていた。滝は、湯殿山麓弥勒寺の幽海上人の即身仏と『一切口外すべからず』という口伝書が残され、御堂の地下にひっそりと隠されたままなのに興味を持った。即身仏は入定後、三年経つと土中より掘り起こされ、礼拝の対象となるはずである。天明の大飢饉は布教のPRに絶好の機会ともいえる、幽海上人は何らかの理由で寺に逃げ込んだ犯罪者で、寺の者が無理矢理ミイラに仕立てあげたのではないかと、滝は仮設を立てた。彼は発掘するため、湯殿村出身である慶子の父親・淡路剛造に協力を依頼した。剛造の屋敷に脅迫状とミイラ化した手首が届けられた。彼は急に発掘資金の援助を中止すると言いだす。その夜、剛造はバスルームで変死体となって発見された。バスルームは、小さな換気窓があるだけで密室状態であった。剛造の通夜、弥勒寺の住職であり、剛造の妻・謡子の兄でもある道海和尚に殺人通知が届けられる。道海は若い頃、剛造と事業に失敗し今は行方不明の伏原欣作と三人で、疎開しに来ていた津島という母娘を村八分にし自殺に追いやったことを告白した。幽海上人の発掘作業が始まった。山小屋で祈祷中の道海は行方不明になり、やがて死体が見つかる。伏原も東京で眠ったまま死体となって発見される。発掘した幽海上人は滝の思ったとおり、無念そうな様をしていた。大学をクビになった滝は淡路家を訪れる。出迎えたのは謡子一人で、末娘・能理子の父親は、剛造に復讐にきた津島の息子・勘治だということ、勘治を事故死させたことを告げ、屋敷に火をつけた。脱出した滝は、その足で慶子の部屋を訪れるが、そこに居たのは能理子であった。能理子は、伏原と知り合い自分の父親が勘治だと教えられ、恋人・津島武は自分の兄だと知ったこと、伏原と協力し、道海の息子で幼い信也を使って、換気窓から剛造を殺害させたこと、道海を殺し、伏原に睡眠薬を渡したことを告白した。滝は、売春婦になっている慶子を探し出したが、もみ合っているうちに慶子は事故死してしまう。能理子は、武には何も語らないまま無理心中をはかった